ビクターロック祭り2024 ライブレポート
2024年11月30日(土) 東京ガーデンシアター

 tight le fool(オープニングアクト)
【SET LIST】
M1 リフレインガール
M2 ラブロマンス

オープニングアクトとして「ビクターロック祭り2024」の幕を切って落としたのは、オーディション「ワン!チャン!!~ビクターロック祭り2024への挑戦~」でグランプリに輝いたtight le foolだ。2023年4月に結成されたばかりの福岡発の4ピースバンド。朝一番に会場に駆けつけたロックファンの温かな拍手に迎えられたメンバーは、挨拶代わりにジャーンと一発鳴らしてみせた。そのみずみずしいサウンド、金髪が眩しいフロントマンRIKU(Gt/Vo)が叫ぶ数々の言葉からはバンドの気合いが伝わってくる。1曲目は「リフレインガール」。RYOTA(Dr)、KENSHIN(Ba)が織り成す軽快なリズムに手拍子が起き、TAKUMI(Gt)が体を動かしながら楽しそうに紡ぐフレーズが、観客の心をもっとオープンにさせる。曲中RIKUが「盛り上がってるか、ロック祭り!」と投げかけた頃には、バンドの鳴らす音に誘われてか、フロアには開演時よりも多くの人が。ここでRIKUは「こんな景色を見られて、音楽やっててよかったなと思っているんですけど、今日の経験を自慢じゃなくて自信に変えてもっと高く飛びたいなと思ってます」と意気込み、コール&レスポンスを実施。演奏を止めて観客に歌を任せたクライマックスでは、〈一切合切金輪際もう関わらんといて〉というフレーズが会場に響いた。

「もう最後だけど僕たちの全部を届けて帰ります!」という言葉通り、「ラブロマンス」を全身全霊で鳴らしきり、ステージをあとにしたtight le fool。"等身大の音楽をあなたに"をテーマに楽曲を奏で、恋愛ソングで共感を集めつつある彼らだが、心から音楽を楽しむ4人の気持ちがダイレクトに伝わってくるライブも素敵だった。去り際にはRIKUが「愛してるぜー! 次はメインアクトで戻ってくるよ!」と宣言。ここから終演までライブを楽しむオーディエンスに対し「ビクターロック祭り、まだまだここから一緒に楽しんでいこうね」と伝えつつ、大きく手を振るメンバーはとてもいい笑顔だった。

TEXT by 蜂須賀ちなみ


THE BAWDIES
【SET LIST】
M1 HOT DOG
M2 GIMME GIMME
M3 LET'S GO BACK
M4 POPCORN
M5 SUGAR PUFF
M6 IT'S TOO LATE
M7 T.Y.I.A.
M8 JUST BE COOL 

オープニング・アクトのtight le fool(「ワン!チャン!! 2024のグランプリバンド」)が終わり、しばしのブランクを経て、開演予定時刻の14:00ぴったりから、今日の出演者を紹介するナレーションが流れる。
その末に「祝・結成20周年、メジャーデビュー15周年!」というアナウンスと映像で紹介された、10回目の「ビクターロック祭り」のトップを飾るのは、THE BAWDIESだ。
SEの「ダンス天国」に乗って、シャウトを一発決めてからベースを持ったROY(Ba/Vo)が、「ロックンロール界のお祭り番長、THE BAWDIESだー!」と挨拶。オーディエンスに「イェー!」のコール&レスポンスを求め、「その前に、お腹が空いたらホットドッグ!召し上がれ!」と、「HOT DOG」でロケットスタート。間奏ではJIM(Gt)がステージ前に跪き、ギターソロを弾きまくる。
続く「GIMME GIMME」では、ROYがイントロでも間奏でもシャウトしっぱなし。「お祭りごとですから、みんな一緒に行きましょう! 曲を知らない人は、一番を聴いてみてください、THE BAWDIESの曲、それで二番三番を歌えます!」と曲に入った「LET’S GO BACK」では、その言葉どおり、〈♪PAPAPA〉のシンガロングが響いた。
「POPCORN」では、ROYの「跳べー!」という号令で、オーディエンスみんな延々とジャンプ、そして後半のブレイクではROYのリクエストで、腕を高く挙げて延々と高速ハンドクラップ。みんな大変そう。でも楽しそう。

「今日集まってくれた皆様へ、そしてビクターへ愛をこめて、ラブソングを」と始まった「SUGAR PUFF」が、この日唯一の、参加者がクールダウンできた曲だった。
「ビクターロック祭りも10周年、THE BAWDIESは結成20周年、デビュー15周年でございます。この数日後、ビクターを背負って、日本を背負って、オーストラリア・ツアーに行ってきます」とROY。「遅れないでついて来てください! 遅れるとこうなります!」という言葉から歌われるのは、もちろん「IT’S TOO LATE」である。サビでオーディエンスの腕が、左右にブンブン振られまくる。
ROYの「T.I.A.!」と、オーディエンスの「T.Y.I.A.!」の掛け合いが繰り返された「T.Y.I.A.」を経てのラスト・チューンは、「JUST BE COOL」。「我々がトップバッターを任されたのは、どういうことかわかっております。打ち上げ花火を上げてくれ、ということだと思うんです。みなさん打ち上げ花火になってください!」というROYのアオリに応えて、アリーナもスタンドも、THE BAWDIESのファンもそれ以外も含めて、腕を挙げたオーディエンスが一斉に跳び続けるさまは、壮観だった。このバンドにトップをオファーしたの、大正解だと実感する。
この曲の最後のブレイクで、ROYは、肺活量どうなってんだと言いたくなるくらいの、長い長いシャウトを聴かせた。嵐のような35分だった。

TEXT by 兵庫慎司


ヤバイTシャツ屋さん
【SET LIST】
M1 あつまれ!パーティーピーポー
M2 ハッピーウェディング前ソング
M3 Blooming the Tank-top
M4 NO MONEY DANCE
M5 喜志駅周辺なんもない
M6 ネコ飼いたい
M7 スプラッピ スプラッパ
M8 すこ。
M9 無線LANばり便利
M10 かわE

「ビクターロック祭り『ワン!チャン!!』初代グランプリ、ヤバイTシャツ屋さん、8年ぶりに帰ってまいりました! ユニバーサルミュージック代表、やらせていただきます!」

今年の『ビクターロック祭り』には、10周年を記念して、レーベルの垣根を超えてゆかりのあるアーティストが集結した。ヤバイTシャツ屋さんとの縁は、こやまたくや(Gt/Vo)が冒頭で言っていた通り、彼らがメジャーデビューをする前から。振り返ればヤバTはあの頃から、人を巻き込むライブをするバンドだった。しかし今は当時の比ではないと、1曲目の「あつまれ!パーティーピーポー」の鳴りように実感させられる。屈強なバンドサウンド、誰に対しても門戸を開くキャッチーな楽曲、遊び心と発明がいっぱいの歌詞。フロアから熱いリアクションが上がるまでが本当にあっという間だ。東京ガーデンシアターいっぱいにハンドワイパーの海が広がっている。

4曲を演奏したあとのMCでは、2016年当時の話題になった。こやま&もりもと(Dr/Cho)の「普通やったらビクターに所属するところをスルーしてますから」「そんな、みなまで言わなくても(笑)」という掛け合いを、ありぼぼ(Ba/Vo)が「でも、ビクターとユニバーサルミュージックの架け橋ですよ」と綺麗にまとめ、ありぼぼ提案の動き(ユニバーサルのロゴをイメージしたジェスチャーをしながら、ビクターのシンボル・ニッパーのように「ワン」と言う)をみんな一緒にやることに。

その後はこやまが「実は1枚だけビクターからCDを出してるんです。そのCDに入っている曲を歌います」と切り出し、2016年に881時間&881枚限定リリースされたシングル『そこまでレアじゃない』の曲を収録順通りに披露した。シングルからの1曲目「喜志駅周辺なんもない」は、2016年にオープニングアクトで出演した際にも演奏していた。当時はフリップで喜志駅周辺について説明する演出があったなと懐かしい気持ちになるが、今は知っている人も知らない人も全員巻き込んで〈サンプラ行ったら挨拶しようか迷う感じの知り合いが居る!〉の大合唱を巻き起こしている。曲中にはこやまが「ビクターのアーティストカッコいい」「ビクターのスタッフセンスいい」と歌い、もりもとが「媚び売りすぎ。ユニバーサルがかわいそう」と笑う一幕も。「ネコ飼いたい」と続き、NHK「おかあさんといっしょ」のエンディングテーマのカバー「スプラッピ スプラッパ」に関しては、「これ、ビクターの人が許可とってくれたんでCDに入れられました!」と語られた。ライブから浮き彫りになるのは“真面目に不真面目”的なバンドの変わらぬスタンス。そしてバンドを支える周囲の人たちへの感謝。湿っぽいシーンは一切ないが、メンバーの想いは音や歌にしっかり乗っている。楽しくてグッとくるライブだ。

「新曲聴いてください!」と今年リリースの「すこ。」、「なんだかセキュリティさんたちがすごく暇そうにしてるんですけど! もっと、むちゃくちゃやれー!」と「無線LANばり便利」で熱く温かく幸福な空気を生むと、「かわE」でフィニッシュ。「呼んでくれてありがとうございました!」と叫びながらこやまが掻き鳴らしたギターの音は、観客の胸の内でしばらくこだましていたことだろう

TEXT by 蜂須賀ちなみ


SCANDAL
【SET LIST】
M1 最終兵器、君
M2 マスターピース
M3 瞬間センチメンタル
M4 ハイライトの中で僕らずっと
M5 テイクミーアウト
M6 A.M.D.K.J
M7 LOVE SURVIVE

 芸人の持ち時間は5分なのに、さっきどんぐりたけしが8分やって舞台監督さんがピリついている、俺は「2分でいけますか?」と訊かれた、いけるわけないだろ!──という怒りをツカミにして爆笑をとった、サツマカワRPGを経てのアクトは、SCANDAL。
4人がそれぞれお立ち台に上がり、ひとしきり踊ったり手を振ったりしてから、「最終兵器、君」でスタートする。HARUNA(Vo/Gt)はギターを提げず、ハンドマイクで、ステージの端から端まで使いながら歌唱。
2曲目「マスターピース」からは、HARUNAがギターを手にし、本来の立ち位置に戻る。左からドラムRINA、ベースTOMOMI、ボーカル&ギターHARUNA、ギターMAMIの横一列で、RINA以外の3人の真後ろにひとつずつアンプがある、衣装は赤一色、という今のSCANDALのフォーメーション、とても画になっている、と、観るたびに思う。海外での活動が常態化しているバンドだから、身につけた武器なのかもしれない。
「瞬間センチメンタル」では、TOMOMIがハンドクラップを求め、HARUNAはシンガロングを求める。そのどちらにも、瞬時に付いていくオーディエンス。ワンマンじゃないのに、この求心力。

「『ビクターロック祭り』は5年ぶり。ビクターに来てから6年ぐらいになるんですけど、去年、ガールズバンドとしてギネス世界記録をとりました」とHARUNA。SCANDALは昨年、ガールズバンドで、メンバーチェンジなしで17年続いていることが、ギネスの世界最長活動記録に認定された (なので今年で18年)。
HARUNA、「『世界一』というタオルを持っているのが、うちのファンです。世界一長く続けているガールズバンドと、その世界一のファンです」。
まだまだやっていくぞ、という覚悟をこめて書いた曲です、という紹介から始まった「ハイライトの中で僕らずっと」では、バック・トラックも相まって、洪水のような音が東京ガーデンシアターを満たしていく。
さらに激しく、さらにダンサブルな「テイクミーアウト」では、オーディエンスの腕が上がり、アリーナが揺れる。
続く「A.M.D.K.J.」ではヘドバンも出た上に、後半のブレイクでは、HARUNAのアオりに応えてでっかいシンガロングが起きる。参加者のリアクションの温度が、おもしろいように上がっていく。
 ラストは、HARUNAとTOMOMIがツインボーカルをとる「LOVE SURVIVE」で、ステージから放たれる熱も、フロアと客席から放たれる熱もピークを迎えて、SCANDALのステージは終了した。

TEXT by 兵庫慎司
go!go!vanillas
【SET LIST】
M1 ⻘いの。 
M2 エマ
M3 アメイジングレース
M4 平安
M5 カウンターアクション
M6 来来来
M7 マジック
 
ここでgo!go!vanillasが登場。現在はポニーキャニオン内のIRORI Recordsに所属するビクターOBで、『ビクターロック祭り」がスタートした2014年にメジャーデビューした彼らは、「青いの。」でライブを開始させた。軽快かつ澄みきったサウンドを鳴らすメンバーは、自らも音楽で遊びつつ、ときどきマイクをオーディエンスに向けたり「楽しんでね!」と呼びかけたりしている。牧達弥(Vo/Gt)の「今日はビクターへの愛を音に変えて、思いきり行くぞー!」という宣言を経て、柳沢進太郎(Gt)とサポートキーボーディスト・井上惇志のフレージングが楽しいインタールードへ。音楽に乗って観客が手拍子を始めた観客に対して、「いいね」と笑顔を向けたのは長谷川プリティ敬祐(Ba)。次の曲「エマ」ではビクター所属当時の演出をリバイバルし、観客と一緒に「ワンツースリー!」と声を合わせてから曲に入った。

〈東京の未来に~♪ 俺らがお世話になったビクターの未来に~♪  僕らの未来に賭けてみよう〉歌詞をアレンジした「アメイジングレース」にイベントに懸ける想いを託すと、MCでは牧が「ビクターで10年の月日を共にして、移籍したんですけど、この祭りに呼んでいただきました。なんという愛。ありがとうございます!」と改めて感謝を言葉にした。演奏再開は、最新アルバム『Lab.』収録の「平安」から。この時代を生きる人々へのメッセージを込めた楽曲を歌う牧は、ステージを降りて観客に支えられながら、観客の近くに行って熱量高く届けている。最後方から力強く鳴らすジェットセイヤ(Dr)を筆頭に、ステージから届けられる音もすごい威力。受け取る観客も真剣で、上がる声、掲げられる拳に熱が入っていた。

曲間をバンドが繋ぐなか、今度は柳沢が観客に言葉を掛ける。「俺たちはビクターにいた時から音楽を研究して、研究し続けて、ここまで音楽をやってきました」、そして「ここで一発デカい花火を打ち上げるために声と手拍子お借りしてもよろしいでしょうか!? ビクターへの愛を一緒に叫んでいただいてもよろしいでしょうか!?」と先輩THE BAWDIESからの影響も感じられる言葉とともにコール&レスポンスへ繋げると、「カウンターアクション」に突入だ。ギターが主役のアッパーチューンで、ギタリストである牧と柳沢は向かい合って楽器を掻き鳴らしたり、一つのマイクを共有しながら歌ったりしている。その裏ではギター組に負けじとプリティと井上も鳴らしまくり、セイヤが一音入魂のドラミングでバンドにブーストをかけている。その熱狂を絶やさず、シームレスに「来来来」へ。超クールな展開だ。

「最後に、このビクターとともに最初に作った、ロックンロールの魔法をかけて帰りたいと思います」と、ラストにはメジャーデビュー曲「マジック」が演奏された。ビクターとバニラズの10年の歩みを祝うとともに、同じくロックに魅了されている観客と想いを共有する晴れやかなエンディング。気持ちのよい余韻の中、『ビクターロック祭り2024」は残すところ3アクトとなった。

TEXT by 蜂須賀ちなみ
サンボマスター
【SET LIST】
M1 稲妻
M2 ヒューマニティ!
M3 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
M4 Future is Yours
M5できっこないを やらなくちゃ
M6 花束

「ヤーレンズ、サンボマスター、トム・ブラウンって、おかしいですよ、『ビクターロック祭り』」と、疑問を呈したりしつつ、本ネタでしっかり爆笑をとったヤーレンズの漫才の次は、そう、サンボマスターだ。
SEのゴダイゴ「MONKEY MAGIC」を、木内泰史(Dr/Cho)のドラムが、絶妙なタイミングで止める。次の瞬間、山口隆(Vo/Gt)が弾き始めたイントロは、最新曲である「稲妻」。丁寧に、真摯に、この曲を歌いきった山口隆、次は「さあみなさん、毎朝流れるこの曲で、踊りまくっていただきましょう。時刻は8時になりました、せーの、ラヴィット!」と、いつものセリフから「ヒューマニティ!」に入る。
「あんたが誰のファンか知らねえよ、俺たちはあんたのことを優勝させに来たんだ」と「全員優勝コール」に入り、そこから続いた「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」では、フロアもスタンド席も、もうボコボコ沸いている熱湯のようなリアクションになる。
「Future is Yours」は、山口のMCを経てから入った。「今日は時間ないから長くしゃべれねんだ」とか言いながら、結局結構しゃべっていた中で、特に印象的だったのは、やっぱりこの『ビクターロック祭り』にまつわる話。
「今日はテレビカメラとか入ってから、変なことは言えねえんだ。俺は前に、安月給コールっていうのをやってしまって。あれでビクターの社員は安月給だって、みんな思ってしまって……」。第一回のロック祭り(2013年)で、ビクターの担当者の実名を挙げた上で、お客さんに「安月給! 安月給!」とコールさせていたサンボマスター。観客も、ノリノリでやっていた記憶が蘇る。
5曲目の「できっこないを やらなくちゃ」では、オーディエンスの、すさまじいボリュームの大合唱と、高いジャンプが東京ガーデンシアターに広がった。なんだかすごい光景。間奏で山口、「一足早いですが、今年も1年、ご苦労様でしたー!」と絶叫する。
最後は、10月25日のツアーファイナルの日本武道館でも、本編ラストに演奏された「花束」。曲の最後、木内&近藤洋一(Ba/Cho)が「あなたが花束」とくり返し歌う合間に、山口、「『ビクターロック祭り』で踊ってるきみがそうだろ?」「一所懸命働いてるビクターの社員さんも!」と、絶妙にはさみこんでいく。
もともとフェスやイベント、つまり自分たちのファン以外の人もいっぱいいる場に、やたらと強いバンドだが、今日はその最上級みたいなステージだった。
ちなみに「稲妻」「ヒューマニティ!」「Future is Yours」「花束」がビクターに来てからの曲、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」「できっこないを やらなくちゃ」が、それ以前の曲である。『ビクターロック祭り』だから気を遣ってそうしたわけではなく、自分たちが今やりたくて、みんなが今聴きたいであろう曲を選んだら、自然にそうなったのだと思う。

TEXT by 兵庫慎司
Dragon Ash
【SET LIST】
M1 Entertain
M2 ROCKET DIVE
M3 For divers area
M4 百合の咲く場所で
M5 Fantasista
M6 Straight Up feat.JESSE
M7 New Era

トリ前のポジションを任せられたのは、『ビクターロック祭り」最多出演数を誇るDragon Ashだ。1曲目は「Entertain」。メンバーが一人ずつ順に登場し、音を重ねるオープニングを経て、躍動的なサウンドがステージ狭しと溢れ出す。Kj(Vo/Gt)が〈その声を僕に 聴かせて〉と歌うと、観客はシンガロングしたり、ビートに合わせて飛び跳ねたりして反応。「ミクスチャーバンド、Dragon Ashと申します」という名乗り、そして「ROCKET DIVE」にも歓声が上がった。バンドの鳴らすサウンドはどこまでも肉体的で、聴く人の細胞に直接訴えかけ、揺らしていく。特にBOTS(DJ)もパーカッションを叩く「For divers area」はヤバい。Kjが「踊れ!」と言うまでもなくフロアは揺れまくり、「頭振れ!」と言えば辺り一面ヘドバンの海に。Kjが「ロックフェス楽しい?」と尋ねると、観客は大きな歓声を返した。

「百合の咲く場所で」では、Kjがみんなの顔が見たいからと照明スタッフに明るくするよう指示。「よく見てるからな!」と嘘のない言葉を伝えてから、サビのフレーズを歌い届けた。そして「16~17歳からずっとこの会社で働いています!」という言葉とともに放たれる圧倒的キラーチューン「Fantasista」。うねるベース、空間を射貫くビート、情熱的なギター、刺激的なスクラッチ。それらに感化されながら、声を上げる観客とバンドがタッグを組んでいる感じが最高で、曲が進むほど、両者ともに熱量を高めていった。この空間にあるのは生身の音楽、飾らない言葉、信じられる熱のみ。Kjの「ライブやってる時は、お前らから絶対目逸らさねえから。その代わりお前ら、自分から目を逸らすなよ!」という言葉も痺れる。

ここで「頼むぜ相棒!」の言葉とともにフラッグを持ったJESSEが登場。次はもちろんこの曲、「Straight Up feat. JESSE」だ。曲中では〈今ガーデンシアターにいる少年少女〉と歌詞が変えられ、今この場にいる人たちへの、リアルタイムのメッセージとして音楽が放たれる。至上のコラボに興奮しながら、そして確かに私たちに向けて歌われているのだと実感に胸を震わせながら、一人ひとりの体温が高まり、結果、空間全体の熱も上がっていく。

ラスト1曲を前に照明が全て消されると、観客の灯したスマホライトがメンバーの目に映る景色を彩った。その景色の中で、Kjが「俺とサク(櫻井誠/Dr)が16歳の時……」と回想し、原宿RUIDOで今は亡きビクターのスタッフ・関口氏に拾ってもらったのだと振り返る。「俺たちもこの1個1個のちっちゃな光をできるだけ見落とさないように、取りこぼさないように、精一杯ロックバンドやって生きていきます。みなさんも自分の光を消さないように、小さくても見失わないように、生きていってください」。ラストの「New Era」は、そんな言葉とともに届けられた。仲間の鳴らすバンドサウンドを背負いながら、Kjは「愛だの恋だの歌わないけど、勝ち負けとか歌わないけど、俺がみんなに音楽を通して言いたいのは……踊りまくれ!」と叫ぶ。それはすなわち「生きろ」ということ。Dragon Ashは今日もロックバンドとして、目の前のオーディエンスに真摯なメッセージを届けた。そしてバトンはキュウソネコカミへと繋がれる。

TEXT by 蜂須賀ちなみ


キュウソネコカミ
【SET LIST】
M1 ビビった
M2 ファントムヴァイブレーション
M3 正義マン
M4 サギグラファー
M5 KMTR645
M6 DQNなりたい、40代で死にたい
M7 ハッピーポンコツ
M8 ネコカミたい
 
「ビクターロック祭り」の常連=ダイノジが、今年はDJでなく漫才を披露してから、いよいよトリ、キュウソネコカミ。「ビクターロック祭り」は10周年、キュウソもメジャーデビュー10周年である。
「行くぜ! 俺たちとビクターの始まりの曲!」と、1曲目は「ビビった」でスタート。「さあみんなで手を振って」のところで、ヤマサキセイヤ(Vo/Gt)、「今日イチのジャンプ、できるかー!」とアオリまくる。
続いてヨコタシンノスケ(Key/Vo)も「俺たちは大トリですよ? いちばんでかいコール&レスポンス、聴かしてもらっていいですか!」とアオリまくり、「ファントムヴァイブレーション」では、曲中の三度のブレイクで、〈スマホはもはや俺の臓器〉のシンガロングが響いた。
その「ファントムヴァイブレーション」の最後でギターを置いたセイヤ、そのままハンドマイクで次の曲を歌い始める。「正義マン」だ。〈不謹慎なヤカラを叩きのめす〉に合わせて、客席いっぱいに、腕が波のように振られる。
次の「サギグラファー」の、曲の中盤でブレイクして、スマホの撮影音が響くところで、ニッパーくんとネズミくんがステージに登場。メンバーも楽器を置いてふたりとフロントに並び、撮影OKタイムが設けられるという特別な演出も。続く「KMTR645」では、オカザワカズマ(Gt)が、おなじみネズミくんモデルのギターで、ソロを弾きまくる。

ビクターから話が来た時、キュウソはインディー色の強いバンドやから、周囲からいろいろ言われた。でも、ビクターに来て思ったのは、ほんとに好き放題できる。上京もしてないし、プロデューサーも付けられたことないし──と、感謝を伝え、これからもビクターと切磋琢磨していきたい、と言うセイヤ。
「行くぜみんな、まだ体力余ってるよな!」と、「DQNなりたい、40代で死にたい」になだれ込む。
〈ヤンキーこわい〉のコール&レスポンスが続く中、セイヤ、筋斗雲に乗って客の海の上へ……のはずが、全然乗れてない状態で進み、あとから筋斗雲が付いてくる。そのままフロア中央まで行き、またステージ前まで戻って来る。筋斗雲もあとから付いてくる。「優しいなおまえら、全然乗り心地ええやんけ」とセイヤがフロアに投げかける。
俺たちはビクターじゃなかったら、こうなってなかったと思う。「それ、おもしろいと思うよ」って好きにやらしてくれた、だから今俺たちをおもしろいと思ってくれたとしたら、それはビクターのおかげ──というシンノスケの言葉からの「ハッピーポンコツ」で、フロアもスタンドも今日何度目かのピークへ。曲中でシンノスケ、「さっき言い忘れてたけど、おまえらのおかげでもあります!」。
「最新がいちばんかっこいい、そしておまえらとの関係を更新し続ける曲」(セイヤ)と、最後に演奏されたのは「ネコカミたい」。「俺たちとビクターの始まりの曲」である「ビビった」で始まり、「ビビった」の2024年バージョンである「ネコカミたい」で終わる。「進化」と「初志貫徹」の両方を表している選曲でありパフォーマンスだった、今日のキュウソは。
「ビクター所属、西宮の、キュウソネコカミでしたー!」とピースサインを出したセイヤがステージから去り、客電が点き、終演アナウンスとBGMが流れても、参加者の〈ヤンキーこわい〉のシンガロングは、かなり長い間、続いた。そして、最後に拍手に変わった。

TEXT by 兵庫慎司

カメラマン:Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)、Norito Ohazama(SOUND SHOOTER) 

© Victor Entertainment, Inc. All rights reserved.
ビクターロック祭り2024 ライブレポート
2024年11月30日(土) 東京ガーデンシアター

 tight le fool(オープニングアクト)
【SET LIST】
M1 リフレインガール
M2 ラブロマンス

オープニングアクトとして「ビクターロック祭り2024」の幕を切って落としたのは、オーディション「ワン!チャン!!~ビクターロック祭り2024への挑戦~」でグランプリに輝いたtight le foolだ。2023年4月に結成されたばかりの福岡発の4ピースバンド。朝一番に会場に駆けつけたロックファンの温かな拍手に迎えられたメンバーは、挨拶代わりにジャーンと一発鳴らしてみせた。そのみずみずしいサウンド、金髪が眩しいフロントマンRIKU(Gt/Vo)が叫ぶ数々の言葉からはバンドの気合いが伝わってくる。1曲目は「リフレインガール」。RYOTA(Dr)、KENSHIN(Ba)が織り成す軽快なリズムに手拍子が起き、TAKUMI(Gt)が体を動かしながら楽しそうに紡ぐフレーズが、観客の心をもっとオープンにさせる。曲中RIKUが「盛り上がってるか、ロック祭り!」と投げかけた頃には、バンドの鳴らす音に誘われてか、フロアには開演時よりも多くの人が。ここでRIKUは「こんな景色を見られて、音楽やっててよかったなと思っているんですけど、今日の経験を自慢じゃなくて自信に変えてもっと高く飛びたいなと思ってます」と意気込み、コール&レスポンスを実施。演奏を止めて観客に歌を任せたクライマックスでは、〈一切合切金輪際もう関わらんといて〉というフレーズが会場に響いた。

「もう最後だけど僕たちの全部を届けて帰ります!」という言葉通り、「ラブロマンス」を全身全霊で鳴らしきり、ステージをあとにしたtight le fool。"等身大の音楽をあなたに"をテーマに楽曲を奏で、恋愛ソングで共感を集めつつある彼らだが、心から音楽を楽しむ4人の気持ちがダイレクトに伝わってくるライブも素敵だった。去り際にはRIKUが「愛してるぜー! 次はメインアクトで戻ってくるよ!」と宣言。ここから終演までライブを楽しむオーディエンスに対し「ビクターロック祭り、まだまだここから一緒に楽しんでいこうね」と伝えつつ、大きく手を振るメンバーはとてもいい笑顔だった。

TEXT by 蜂須賀ちなみ


THE BAWDIES
【SET LIST】
M1 HOT DOG
M2 GIMME GIMME
M3 LET'S GO BACK
M4 POPCORN
M5 SUGAR PUFF
M6 IT'S TOO LATE
M7 T.Y.I.A.
M8 JUST BE COOL 

オープニング・アクトのtight le fool(「ワン!チャン!! 2024のグランプリバンド」)が終わり、しばしのブランクを経て、開演予定時刻の14:00ぴったりから、今日の出演者を紹介するナレーションが流れる。
その末に「祝・結成20周年、メジャーデビュー15周年!」というアナウンスと映像で紹介された、10回目の「ビクターロック祭り」のトップを飾るのは、THE BAWDIESだ。
SEの「ダンス天国」に乗って、シャウトを一発決めてからベースを持ったROY(Ba/Vo)が、「ロックンロール界のお祭り番長、THE BAWDIESだー!」と挨拶。オーディエンスに「イェー!」のコール&レスポンスを求め、「その前に、お腹が空いたらホットドッグ!召し上がれ!」と、「HOT DOG」でロケットスタート。間奏ではJIM(Gt)がステージ前に跪き、ギターソロを弾きまくる。
続く「GIMME GIMME」では、ROYがイントロでも間奏でもシャウトしっぱなし。「お祭りごとですから、みんな一緒に行きましょう! 曲を知らない人は、一番を聴いてみてください、THE BAWDIESの曲、それで二番三番を歌えます!」と曲に入った「LET’S GO BACK」では、その言葉どおり、〈♪PAPAPA〉のシンガロングが響いた。
「POPCORN」では、ROYの「跳べー!」という号令で、オーディエンスみんな延々とジャンプ、そして後半のブレイクではROYのリクエストで、腕を高く挙げて延々と高速ハンドクラップ。みんな大変そう。でも楽しそう。

「今日集まってくれた皆様へ、そしてビクターへ愛をこめて、ラブソングを」と始まった「SUGAR PUFF」が、この日唯一の、参加者がクールダウンできた曲だった。
「ビクターロック祭りも10周年、THE BAWDIESは結成20周年、デビュー15周年でございます。この数日後、ビクターを背負って、日本を背負って、オーストラリア・ツアーに行ってきます」とROY。「遅れないでついて来てください! 遅れるとこうなります!」という言葉から歌われるのは、もちろん「IT’S TOO LATE」である。サビでオーディエンスの腕が、左右にブンブン振られまくる。
ROYの「T.I.A.!」と、オーディエンスの「T.Y.I.A.!」の掛け合いが繰り返された「T.Y.I.A.」を経てのラスト・チューンは、「JUST BE COOL」。「我々がトップバッターを任されたのは、どういうことかわかっております。打ち上げ花火を上げてくれ、ということだと思うんです。みなさん打ち上げ花火になってください!」というROYのアオリに応えて、アリーナもスタンドも、THE BAWDIESのファンもそれ以外も含めて、腕を挙げたオーディエンスが一斉に跳び続けるさまは、壮観だった。このバンドにトップをオファーしたの、大正解だと実感する。
この曲の最後のブレイクで、ROYは、肺活量どうなってんだと言いたくなるくらいの、長い長いシャウトを聴かせた。嵐のような35分だった。

TEXT by 兵庫慎司


ヤバイTシャツ屋さん
【SET LIST】
M1 あつまれ!パーティーピーポー
M2 ハッピーウェディング前ソング
M3 Blooming the Tank-top
M4 NO MONEY DANCE
M5 喜志駅周辺なんもない
M6 ネコ飼いたい
M7 スプラッピ スプラッパ
M8 すこ。
M9 無線LANばり便利
M10 かわE

「ビクターロック祭り『ワン!チャン!!』初代グランプリ、ヤバイTシャツ屋さん、8年ぶりに帰ってまいりました! ユニバーサルミュージック代表、やらせていただきます!」

今年の『ビクターロック祭り』には、10周年を記念して、レーベルの垣根を超えてゆかりのあるアーティストが集結した。ヤバイTシャツ屋さんとの縁は、こやまたくや(Gt/Vo)が冒頭で言っていた通り、彼らがメジャーデビューをする前から。振り返ればヤバTはあの頃から、人を巻き込むライブをするバンドだった。しかし今は当時の比ではないと、1曲目の「あつまれ!パーティーピーポー」の鳴りように実感させられる。屈強なバンドサウンド、誰に対しても門戸を開くキャッチーな楽曲、遊び心と発明がいっぱいの歌詞。フロアから熱いリアクションが上がるまでが本当にあっという間だ。東京ガーデンシアターいっぱいにハンドワイパーの海が広がっている。

4曲を演奏したあとのMCでは、2016年当時の話題になった。こやま&もりもと(Dr/Cho)の「普通やったらビクターに所属するところをスルーしてますから」「そんな、みなまで言わなくても(笑)」という掛け合いを、ありぼぼ(Ba/Vo)が「でも、ビクターとユニバーサルミュージックの架け橋ですよ」と綺麗にまとめ、ありぼぼ提案の動き(ユニバーサルのロゴをイメージしたジェスチャーをしながら、ビクターのシンボル・ニッパーのように「ワン」と言う)をみんな一緒にやることに。

その後はこやまが「実は1枚だけビクターからCDを出してるんです。そのCDに入っている曲を歌います」と切り出し、2016年に881時間&881枚限定リリースされたシングル『そこまでレアじゃない』の曲を収録順通りに披露した。シングルからの1曲目「喜志駅周辺なんもない」は、2016年にオープニングアクトで出演した際にも演奏していた。当時はフリップで喜志駅周辺について説明する演出があったなと懐かしい気持ちになるが、今は知っている人も知らない人も全員巻き込んで〈サンプラ行ったら挨拶しようか迷う感じの知り合いが居る!〉の大合唱を巻き起こしている。曲中にはこやまが「ビクターのアーティストカッコいい」「ビクターのスタッフセンスいい」と歌い、もりもとが「媚び売りすぎ。ユニバーサルがかわいそう」と笑う一幕も。「ネコ飼いたい」と続き、NHK「おかあさんといっしょ」のエンディングテーマのカバー「スプラッピ スプラッパ」に関しては、「これ、ビクターの人が許可とってくれたんでCDに入れられました!」と語られた。ライブから浮き彫りになるのは“真面目に不真面目”的なバンドの変わらぬスタンス。そしてバンドを支える周囲の人たちへの感謝。湿っぽいシーンは一切ないが、メンバーの想いは音や歌にしっかり乗っている。楽しくてグッとくるライブだ。

「新曲聴いてください!」と今年リリースの「すこ。」、「なんだかセキュリティさんたちがすごく暇そうにしてるんですけど! もっと、むちゃくちゃやれー!」と「無線LANばり便利」で熱く温かく幸福な空気を生むと、「かわE」でフィニッシュ。「呼んでくれてありがとうございました!」と叫びながらこやまが掻き鳴らしたギターの音は、観客の胸の内でしばらくこだましていたことだろう

TEXT by 蜂須賀ちなみ


SCANDAL
【SET LIST】
M1 最終兵器、君
M2 マスターピース
M3 瞬間センチメンタル
M4 ハイライトの中で僕らずっと
M5 テイクミーアウト
M6 A.M.D.K.J
M7 LOVE SURVIVE

 芸人の持ち時間は5分なのに、さっきどんぐりたけしが8分やって舞台監督さんがピリついている、俺は「2分でいけますか?」と訊かれた、いけるわけないだろ!──という怒りをツカミにして爆笑をとった、サツマカワRPGを経てのアクトは、SCANDAL。
4人がそれぞれお立ち台に上がり、ひとしきり踊ったり手を振ったりしてから、「最終兵器、君」でスタートする。HARUNA(Vo/Gt)はギターを提げず、ハンドマイクで、ステージの端から端まで使いながら歌唱。
2曲目「マスターピース」からは、HARUNAがギターを手にし、本来の立ち位置に戻る。左からドラムRINA、ベースTOMOMI、ボーカル&ギターHARUNA、ギターMAMIの横一列で、RINA以外の3人の真後ろにひとつずつアンプがある、衣装は赤一色、という今のSCANDALのフォーメーション、とても画になっている、と、観るたびに思う。海外での活動が常態化しているバンドだから、身につけた武器なのかもしれない。
「瞬間センチメンタル」では、TOMOMIがハンドクラップを求め、HARUNAはシンガロングを求める。そのどちらにも、瞬時に付いていくオーディエンス。ワンマンじゃないのに、この求心力。

「『ビクターロック祭り』は5年ぶり。ビクターに来てから6年ぐらいになるんですけど、去年、ガールズバンドとしてギネス世界記録をとりました」とHARUNA。SCANDALは昨年、ガールズバンドで、メンバーチェンジなしで17年続いていることが、ギネスの世界最長活動記録に認定された (なので今年で18年)。
HARUNA、「『世界一』というタオルを持っているのが、うちのファンです。世界一長く続けているガールズバンドと、その世界一のファンです」。
まだまだやっていくぞ、という覚悟をこめて書いた曲です、という紹介から始まった「ハイライトの中で僕らずっと」では、バック・トラックも相まって、洪水のような音が東京ガーデンシアターを満たしていく。
さらに激しく、さらにダンサブルな「テイクミーアウト」では、オーディエンスの腕が上がり、アリーナが揺れる。
続く「A.M.D.K.J.」ではヘドバンも出た上に、後半のブレイクでは、HARUNAのアオりに応えてでっかいシンガロングが起きる。参加者のリアクションの温度が、おもしろいように上がっていく。
 ラストは、HARUNAとTOMOMIがツインボーカルをとる「LOVE SURVIVE」で、ステージから放たれる熱も、フロアと客席から放たれる熱もピークを迎えて、SCANDALのステージは終了した。

TEXT by 兵庫慎司


go!go!vanillas
【SET LIST】
M1 ⻘いの。 
M2 エマ
M3 アメイジングレース
M4 平安
M5 カウンターアクション
M6 来来来
M7 マジック
 
ここでgo!go!vanillasが登場。現在はポニーキャニオン内のIRORI Recordsに所属するビクターOBで、『ビクターロック祭り」がスタートした2014年にメジャーデビューした彼らは、「青いの。」でライブを開始させた。軽快かつ澄みきったサウンドを鳴らすメンバーは、自らも音楽で遊びつつ、ときどきマイクをオーディエンスに向けたり「楽しんでね!」と呼びかけたりしている。牧達弥(Vo/Gt)の「今日はビクターへの愛を音に変えて、思いきり行くぞー!」という宣言を経て、柳沢進太郎(Gt)とサポートキーボーディスト・井上惇志のフレージングが楽しいインタールードへ。音楽に乗って観客が手拍子を始めた観客に対して、「いいね」と笑顔を向けたのは長谷川プリティ敬祐(Ba)。次の曲「エマ」ではビクター所属当時の演出をリバイバルし、観客と一緒に「ワンツースリー!」と声を合わせてから曲に入った。

〈東京の未来に~♪ 俺らがお世話になったビクターの未来に~♪  僕らの未来に賭けてみよう〉歌詞をアレンジした「アメイジングレース」にイベントに懸ける想いを託すと、MCでは牧が「ビクターで10年の月日を共にして、移籍したんですけど、この祭りに呼んでいただきました。なんという愛。ありがとうございます!」と改めて感謝を言葉にした。演奏再開は、最新アルバム『Lab.』収録の「平安」から。この時代を生きる人々へのメッセージを込めた楽曲を歌う牧は、ステージを降りて観客に支えられながら、観客の近くに行って熱量高く届けている。最後方から力強く鳴らすジェットセイヤ(Dr)を筆頭に、ステージから届けられる音もすごい威力。受け取る観客も真剣で、上がる声、掲げられる拳に熱が入っていた。

曲間をバンドが繋ぐなか、今度は柳沢が観客に言葉を掛ける。「俺たちはビクターにいた時から音楽を研究して、研究し続けて、ここまで音楽をやってきました」、そして「ここで一発デカい花火を打ち上げるために声と手拍子お借りしてもよろしいでしょうか!? ビクターへの愛を一緒に叫んでいただいてもよろしいでしょうか!?」と先輩THE BAWDIESからの影響も感じられる言葉とともにコール&レスポンスへ繋げると、「カウンターアクション」に突入だ。ギターが主役のアッパーチューンで、ギタリストである牧と柳沢は向かい合って楽器を掻き鳴らしたり、一つのマイクを共有しながら歌ったりしている。その裏ではギター組に負けじとプリティと井上も鳴らしまくり、セイヤが一音入魂のドラミングでバンドにブーストをかけている。その熱狂を絶やさず、シームレスに「来来来」へ。超クールな展開だ。

「最後に、このビクターとともに最初に作った、ロックンロールの魔法をかけて帰りたいと思います」と、ラストにはメジャーデビュー曲「マジック」が演奏された。ビクターとバニラズの10年の歩みを祝うとともに、同じくロックに魅了されている観客と想いを共有する晴れやかなエンディング。気持ちのよい余韻の中、『ビクターロック祭り2024」は残すところ3アクトとなった。

TEXT by 蜂須賀ちなみ


サンボマスター
【SET LIST】
M1 稲妻
M2 ヒューマニティ!
M3 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
M4 Future is Yours
M5できっこないを やらなくちゃ
M6 花束

「ヤーレンズ、サンボマスター、トム・ブラウンって、おかしいですよ、『ビクターロック祭り』」と、疑問を呈したりしつつ、本ネタでしっかり爆笑をとったヤーレンズの漫才の次は、そう、サンボマスターだ。
SEのゴダイゴ「MONKEY MAGIC」を、木内泰史(Dr/Cho)のドラムが、絶妙なタイミングで止める。次の瞬間、山口隆(Vo/Gt)が弾き始めたイントロは、最新曲である「稲妻」。丁寧に、真摯に、この曲を歌いきった山口隆、次は「さあみなさん、毎朝流れるこの曲で、踊りまくっていただきましょう。時刻は8時になりました、せーの、ラヴィット!」と、いつものセリフから「ヒューマニティ!」に入る。
「あんたが誰のファンか知らねえよ、俺たちはあんたのことを優勝させに来たんだ」と「全員優勝コール」に入り、そこから続いた「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」では、フロアもスタンド席も、もうボコボコ沸いている熱湯のようなリアクションになる。
「Future is Yours」は、山口のMCを経てから入った。「今日は時間ないから長くしゃべれねんだ」とか言いながら、結局結構しゃべっていた中で、特に印象的だったのは、やっぱりこの『ビクターロック祭り』にまつわる話。
「今日はテレビカメラとか入ってから、変なことは言えねえんだ。俺は前に、安月給コールっていうのをやってしまって。あれでビクターの社員は安月給だって、みんな思ってしまって……」。第一回のロック祭り(2013年)で、ビクターの担当者の実名を挙げた上で、お客さんに「安月給! 安月給!」とコールさせていたサンボマスター。観客も、ノリノリでやっていた記憶が蘇る。
5曲目の「できっこないを やらなくちゃ」では、オーディエンスの、すさまじいボリュームの大合唱と、高いジャンプが東京ガーデンシアターに広がった。なんだかすごい光景。間奏で山口、「一足早いですが、今年も1年、ご苦労様でしたー!」と絶叫する。
最後は、10月25日のツアーファイナルの日本武道館でも、本編ラストに演奏された「花束」。曲の最後、木内&近藤洋一(Ba/Cho)が「あなたが花束」とくり返し歌う合間に、山口、「『ビクターロック祭り』で踊ってるきみがそうだろ?」「一所懸命働いてるビクターの社員さんも!」と、絶妙にはさみこんでいく。
もともとフェスやイベント、つまり自分たちのファン以外の人もいっぱいいる場に、やたらと強いバンドだが、今日はその最上級みたいなステージだった。
ちなみに「稲妻」「ヒューマニティ!」「Future is Yours」「花束」がビクターに来てからの曲、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」「できっこないを やらなくちゃ」が、それ以前の曲である。『ビクターロック祭り』だから気を遣ってそうしたわけではなく、自分たちが今やりたくて、みんなが今聴きたいであろう曲を選んだら、自然にそうなったのだと思う。

TEXT by 兵庫慎司


Dragon Ash
【SET LIST】
M1 Entertain
M2 ROCKET DIVE
M3 For divers area
M4 百合の咲く場所で
M5 Fantasista
M6 Straight Up feat.JESSE
M7 New Era

トリ前のポジションを任せられたのは、『ビクターロック祭り」最多出演数を誇るDragon Ashだ。1曲目は「Entertain」。メンバーが一人ずつ順に登場し、音を重ねるオープニングを経て、躍動的なサウンドがステージ狭しと溢れ出す。Kj(Vo/Gt)が〈その声を僕に 聴かせて〉と歌うと、観客はシンガロングしたり、ビートに合わせて飛び跳ねたりして反応。「ミクスチャーバンド、Dragon Ashと申します」という名乗り、そして「ROCKET DIVE」にも歓声が上がった。バンドの鳴らすサウンドはどこまでも肉体的で、聴く人の細胞に直接訴えかけ、揺らしていく。特にBOTS(DJ)もパーカッションを叩く「For divers area」はヤバい。Kjが「踊れ!」と言うまでもなくフロアは揺れまくり、「頭振れ!」と言えば辺り一面ヘドバンの海に。Kjが「ロックフェス楽しい?」と尋ねると、観客は大きな歓声を返した。

「百合の咲く場所で」では、Kjがみんなの顔が見たいからと照明スタッフに明るくするよう指示。「よく見てるからな!」と嘘のない言葉を伝えてから、サビのフレーズを歌い届けた。そして「16~17歳からずっとこの会社で働いています!」という言葉とともに放たれる圧倒的キラーチューン「Fantasista」。うねるベース、空間を射貫くビート、情熱的なギター、刺激的なスクラッチ。それらに感化されながら、声を上げる観客とバンドがタッグを組んでいる感じが最高で、曲が進むほど、両者ともに熱量を高めていった。この空間にあるのは生身の音楽、飾らない言葉、信じられる熱のみ。Kjの「ライブやってる時は、お前らから絶対目逸らさねえから。その代わりお前ら、自分から目を逸らすなよ!」という言葉も痺れる。

ここで「頼むぜ相棒!」の言葉とともにフラッグを持ったJESSEが登場。次はもちろんこの曲、「Straight Up feat. JESSE」だ。曲中では〈今ガーデンシアターにいる少年少女〉と歌詞が変えられ、今この場にいる人たちへの、リアルタイムのメッセージとして音楽が放たれる。至上のコラボに興奮しながら、そして確かに私たちに向けて歌われているのだと実感に胸を震わせながら、一人ひとりの体温が高まり、結果、空間全体の熱も上がっていく。

ラスト1曲を前に照明が全て消されると、観客の灯したスマホライトがメンバーの目に映る景色を彩った。その景色の中で、Kjが「俺とサク(櫻井誠/Dr)が16歳の時……」と回想し、原宿RUIDOで今は亡きビクターのスタッフ・関口氏に拾ってもらったのだと振り返る。「俺たちもこの1個1個のちっちゃな光をできるだけ見落とさないように、取りこぼさないように、精一杯ロックバンドやって生きていきます。みなさんも自分の光を消さないように、小さくても見失わないように、生きていってください」。ラストの「New Era」は、そんな言葉とともに届けられた。仲間の鳴らすバンドサウンドを背負いながら、Kjは「愛だの恋だの歌わないけど、勝ち負けとか歌わないけど、俺がみんなに音楽を通して言いたいのは……踊りまくれ!」と叫ぶ。それはすなわち「生きろ」ということ。Dragon Ashは今日もロックバンドとして、目の前のオーディエンスに真摯なメッセージを届けた。そしてバトンはキュウソネコカミへと繋がれる。

TEXT by 蜂須賀ちなみ


キュウソネコカミ
【SET LIST】
M1 ビビった
M2 ファントムヴァイブレーション
M3 正義マン
M4 サギグラファー
M5 KMTR645
M6 DQNなりたい、40代で死にたい
M7 ハッピーポンコツ
M8 ネコカミたい
 
「ビクターロック祭り」の常連=ダイノジが、今年はDJでなく漫才を披露してから、いよいよトリ、キュウソネコカミ。「ビクターロック祭り」は10周年、キュウソもメジャーデビュー10周年である。
「行くぜ! 俺たちとビクターの始まりの曲!」と、1曲目は「ビビった」でスタート。「さあみんなで手を振って」のところで、ヤマサキセイヤ(Vo/Gt)、「今日イチのジャンプ、できるかー!」とアオリまくる。
続いてヨコタシンノスケ(Key/Vo)も「俺たちは大トリですよ? いちばんでかいコール&レスポンス、聴かしてもらっていいですか!」とアオリまくり、「ファントムヴァイブレーション」では、曲中の三度のブレイクで、〈スマホはもはや俺の臓器〉のシンガロングが響いた。
その「ファントムヴァイブレーション」の最後でギターを置いたセイヤ、そのままハンドマイクで次の曲を歌い始める。「正義マン」だ。〈不謹慎なヤカラを叩きのめす〉に合わせて、客席いっぱいに、腕が波のように振られる。
次の「サギグラファー」の、曲の中盤でブレイクして、スマホの撮影音が響くところで、ニッパーくんとネズミくんがステージに登場。メンバーも楽器を置いてふたりとフロントに並び、撮影OKタイムが設けられるという特別な演出も。続く「KMTR645」では、オカザワカズマ(Gt)が、おなじみネズミくんモデルのギターで、ソロを弾きまくる。

ビクターから話が来た時、キュウソはインディー色の強いバンドやから、周囲からいろいろ言われた。でも、ビクターに来て思ったのは、ほんとに好き放題できる。上京もしてないし、プロデューサーも付けられたことないし──と、感謝を伝え、これからもビクターと切磋琢磨していきたい、と言うセイヤ。
「行くぜみんな、まだ体力余ってるよな!」と、「DQNなりたい、40代で死にたい」になだれ込む。
〈ヤンキーこわい〉のコール&レスポンスが続く中、セイヤ、筋斗雲に乗って客の海の上へ……のはずが、全然乗れてない状態で進み、あとから筋斗雲が付いてくる。そのままフロア中央まで行き、またステージ前まで戻って来る。筋斗雲もあとから付いてくる。「優しいなおまえら、全然乗り心地ええやんけ」とセイヤがフロアに投げかける。
俺たちはビクターじゃなかったら、こうなってなかったと思う。「それ、おもしろいと思うよ」って好きにやらしてくれた、だから今俺たちをおもしろいと思ってくれたとしたら、それはビクターのおかげ──というシンノスケの言葉からの「ハッピーポンコツ」で、フロアもスタンドも今日何度目かのピークへ。曲中でシンノスケ、「さっき言い忘れてたけど、おまえらのおかげでもあります!」。
「最新がいちばんかっこいい、そしておまえらとの関係を更新し続ける曲」(セイヤ)と、最後に演奏されたのは「ネコカミたい」。「俺たちとビクターの始まりの曲」である「ビビった」で始まり、「ビビった」の2024年バージョンである「ネコカミたい」で終わる。「進化」と「初志貫徹」の両方を表している選曲でありパフォーマンスだった、今日のキュウソは。
「ビクター所属、西宮の、キュウソネコカミでしたー!」とピースサインを出したセイヤがステージから去り、客電が点き、終演アナウンスとBGMが流れても、参加者の〈ヤンキーこわい〉のシンガロングは、かなり長い間、続いた。そして、最後に拍手に変わった。

TEXT by 兵庫慎司

カメラマン:
Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)、Norito Ohazama(SOUND SHOOTER)
 
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